世界の生成AI特許出願ランキング・トップ20社が発表されました。
みなさんはどのような企業がランクインしていると思いますか?
「生成AI」と言えば良く耳にするのが、
- ChatGPT
- Claude
- Gemini
- Perplexity
- Midjourney
- DALL・E2
これらのサービスはすべてアメリカの企業です。
当然、生成AIの特許出願数もテック大国であるアメリカ企業が上位を独占!かと思いきや・・・、
実はあの国の企業が生成AIの特許を数多く有しているのです。
この記事では、世界の生成AIの特許出願数の上位20社を一目でわかるインフォグラフィックで紹介しています。
また、「最新の生成AI技術4選」、「日本企業とAIの動向」、「AI特許の展望」までをわかりやすく解説します。
まずは生成AIの特許出願ランキング。スクロールすると驚きの結果が待っていますので、ぜひご覧ください!
世界の生成AI特許出願ランキングトップ20社
上記のランキングを日本語で表にしましたので参考にしてください。
インフォグラフィックでは記されていない『業種』も付け加えてあります。
企業名 | 国名 | 生成AI特許 出願数 | 業種 |
---|---|---|---|
テンセント・ホールディングス | 2,074 | テクノロジー | |
中国平安保険 | 1,564 | 金融 | |
百度(バイドゥ) | 1,234 | テクノロジー | |
IBM | 601 | テクノロジー | |
アリババグループ | 571 | テクノロジー | |
サムスン電子 | 468 | テクノロジー | |
アルファベット(グーグル) | 443 | テクノロジー | |
バイトダンス | 418 | テクノロジー | |
BBKエレクトロニクス | 377 | テクノロジー | |
マイクロソフト | 377 | テクノロジー | |
網易(ネットイース) | 337 | テクノロジー | |
NTT | 330 | 通信 | |
華為技術(ファーウェイ) | 328 | テクノロジー | |
中国移動通信 | 300 | 通信 | |
国家電網 | 291 | エネルギー | |
アドビ | 257 | テクノロジー | |
ソニーグループ | 218 | テクノロジー | |
シーメンス | 208 | 産業機器 | |
アントグループ | 202 | 金融 | |
中国工商銀行 | 191 | 金融 | |
合計 | 10,789 件 |
みなさんもきっと、中国企業の多さに驚かれたのではないでしょうか?
世界の生成AI特許出願ランキングは、各国・各企業のAI技術開発への取り組みの違いを鮮明に示しています。
中国企業の量的な優位性、日本企業の着実な進歩、そしてアメリカ企業の質的な強さが浮き彫りになっており、今後のAI技術の発展と各国の競争がますます激しくなることが予想されます。
中国の圧倒的な存在感
ランキングを見て最も目を引くのは、中国企業の圧倒的な強さです。
- 中国企業がトップ3を席巻
- トップ20内に11社ランクイン
- 合計10,789件の内、7,887件(73.1%)が中国企業
この結果は、中国政府がAI技術開発を国家戦略として位置づけ、積極的に投資を行っていることが容易に想像できます。
特にテンセント、百度といったテクノロジー企業だけではなく、中国平安保険や中国工商銀行といった金融機関もランクインしていることに注目です。
日本企業の順位
日本企業の順位に注目すると、驚くべき結果が見えてきます。
- NTT(日本電信電話):13位、330件の特許出願
- ソニーグループ:18位、218件の特許出願
- NTTは通信業界で世界1位の特許出願数
ソニーも、エンタメや家電で知られる企業でありながら、将来のAIテクノロジー市場で「リーダーシップを獲得する」という意思が読み取れます。
特にNTTは通信業界でありながら、AI特許出願数で世界13位と、技術力の高さがうかがえます。
この2社が世界トップ20にランクインしていることは、日本のAI技術開発の強さを示しています。
アメリカ企業の質と多様性
アメリカ企業は数の上では中国に及びませんが、その質と多様性において注目に値します。
- IBM、Alphabet、Microsoftといったテックジャイアントがランクイン
- アドビ(16位)のような特定分野に特化した企業も存在感を示している
- トップ20の内、5社がアメリカ企業
これらの企業は、単に特許出願数を競うのではなく、それぞれの強みを活かした独自のAI技術開発を進めています。
例えば、IBMは企業向けAIソリューション、グーグルは検索技術とAIの融合、マイクロソフトはクラウドサービスとAIの統合など、各社の特徴が出ています。
特許の種類と応用分野
生成AIの特許と言われてもどのような種類でどのような内容なのでしょうか?
ここでは特許の種類と応用されている分野を見てみましょう。
特許の種類
- 動画と画像データ関連: 約1万8000件
- テキスト関連: 1万3494件
- 音声と音楽関連: 1万3480件
全体的に大きな差はありませんが、動画と画像データはエンタメだけではなく医療や自動運転など多くの分野での利用が期待できるため件数が多いと推測できます。
応用分野
- 新薬の開発
-
生成AIを用いて新薬の分子構造を予測し、効率的な薬剤開発を支援します。
- カスタマーサービスのチャットボット
-
自然言語処理技術を活用し、顧客対応を自動化し、迅速かつ正確なサービス提供を実現します。
- 製品デザイン
-
画像生成技術を利用して、新しい製品デザインやプロトタイプを迅速に作成します。
- 自動運転
-
動画データ解析技術を用いて、自動運転車の周囲環境認識や経路計画を行います
これまで人しかでいないと思われていたアイデアや創造、デザインといった分野にもAI技術が適応されはじめていますね。
仕事がなくならないか不安になった方は、下記の記事もご覧ください。
生成AI分野での最新の技術トレンド4選
一口に生成AIといってもその裏では数多くの技術が誕生しています。
ここでは生成AI分野における最新の技術トレンド4選をわかりやすく説明します。
1. RAG (Retrieval Augmented Generation)
RAGとは、大規模言語モデル(LLM)に外部情報の検索を組み合わせる技術です。
簡単に言うと、内部の情報(LLM)に外部の検索を組み合わせることにより、ハルシネーション(AIの誤り)のリスクを低減し、正確な情報が提供できます。
RAGの活用方法として、以下が挙げられます。
- チャットボットの導入
- 市場調査の支援
- 大学・研究機関での効率的な情報収集
企業へRAGを導入する具体的なメリットの例は以下の通りです。
- 社員が質問を入力すると過去のFAQや関連文章から自動回答で自己完結できる
- 過去の文章や社内規定を参照しテンプレートを自動作成してくれる
- 過去の契約書や報告書を簡単に参照できれば新しい書類作成の品質が向上する
2. マルチモーダルLLM
LLMのようなテキスト情報だけでなく、画像や音声も含めた複数の形式のデータを同時に扱うことができるのが「マルチモーダルLLM」です。
これにより、グラフやチャートの読み取り、構造物の異常検知、パッケージデザインの評価など、多様なタスクに対応可能です。
企業へRAGを導入する具体的なメリットの例は以下の通りです。
- 画像や動画を含むソーシャルメディア投稿を解析し、顧客のトレンドを把握できるソーシャルメディア分析
- 過去の製品デザインの画像を解析し、新しいアイデアを生成させるデザインレビューの効率化
- 製造ラインで製品画像をリアルタイムで解析し、不良品の早期発見につなげる品質管理の強化
3. ロングコンテキストLLM
従来のLLMよりもより長い文脈や大量のテキストデータを理解し、それを基ににして応答を生成できる大規模な言語モデルです。
これにより、長期的な顧客コンタクト履歴に基づく提案や、大量のプログラム改修方法の提案など、幅広いユースケースが実現可能です。
ただし、大量データ読み取り時のリードタイムやAPIコストが課題となります。
4. ボイスボット・AIアバター
顧客対応への活用が期待される技術として、音声での顧客対応やWebサイト上でのアバターによる顧客対応があります。
これには会話シナリオ制御やイレギュラーな発話への対応など、高度な制御が必要です。
デロイト トーマツはNVIDIAとのアライアンスでQuartz Frontline AI™というアプリケーションを開発し、パーソナライズされた顧客対応を自動化しています。
日本国内企業と生成AIの動向
「日本は生成AIの分野で遅れを取っている」という言葉を聞きますが、本当でしょうか?
事実、総務所の令和6年版情報通信白書(概要)によると、日本の生成AIの利用率はわずか9.1%に留まり、
米国の46.3%、ドイツの34.6%と比較すると明らかに低いです。
確かに、論文の少なさ、英語技術者の少なさ、過剰なお客様主義、失敗を恐れる文化などが影響しているため諸外国に後れを取っていますが、まだまだ始まったばかりです。
ここでは日本企業の導入傾向や成長予想、導入事例を見ていきます。
国内外企業による生成AI導入
国内の企業では
- 社内版チャットアプリ
- 独自データを組み込んだ生成AIアプリケーション
などの導入が進んでいます。
製造業やサービス業では、生成AIを利用した革新的な製品開発や顧客対応の向上が期待されています。
AI技術を効果的に取り入れることで、国際競争力を強化し、次世代の産業成長を牽引する企業が増えていくでしょう。
生成AI市場規模と成長予測
日本国内では2023年時点で1,188億円だった生成AI市場は、2030年には約15倍となる1兆7,774億円に達すると予想されています。
世界市場でも同様に急成長しており、多くの産業で生成AI技術が活用されています。
企業の導入事例
実際にAIを導入している代表的な企業の内容を見てみましょう。
- パナソニックコネクト: 社内データベースと連携したAIアシスタントを導入し、業務効率化を図っています。
- セブンイレブン・ジャパン: 商品企画期間を大幅に短縮するために生成AIを活用しています。
- 大林組: 建物デザイン案を生成AIで提案するツールを開発しています。
まとめと今後の展望
中国企業が生成AIの特許出願で他国を圧倒していましたね。
まとめと今後の展望として、最後に以下の項目で終わりにしたいと思います。
- AI特許出願の重要性
- 今度の課題と対策
- 持続的な技術進化への期待
AI特許出願の重要性
AI特許出願は、技術開発や市場競争において重要な役割を果たしています。特許取得は、企業の技術力や革新性を示す指標となり、競合他社との差別化を図るために重要です。
また、特許取得は、企業が自社の技術を独占的に利用することを可能にし、競合他社が同等の技術を開発することを阻害することができます。
AI特許出願は、AI技術の開発と普及を促進する役割も担っており、企業は特許取得によって自社の技術を保護し、安心して技術開発を進めることができます。
更に特許取得は、AI技術の開発に投資する意欲を高める効果もあるため、経済的にも重要な役割だと言えます。
今後の課題と対策
AI特許出願は、今後ますます重要性を増していくと予想されます。
しかし、AI特許出願には、いくつかの課題も存在します。
- 課題1:急速な進化
-
AI技術は、日々進化しており、特許出願の対象となる技術分野も変化しています。そのため、特許出願者は、最新の技術動向を常に把握し、適切な特許出願を行う必要があります。
- 課題2:特許審査の複雑化
-
AI技術は、従来の技術とは異なるため、特許審査も複雑化しています。特許審査官は、AI技術に関する専門知識を必要とするため、審査に時間がかかる場合があります。
- 課題3:特許紛争の増加
-
AI技術は、さまざまな分野で活用され始めており、特許紛争も増加しています。特許紛争は、企業にとって大きな負担となるため、特許出願者は、特許紛争のリスクを最小限に抑える必要があります。
これらの課題に対処するために、特許出願者は、以下の対策を検討する必要があります。
- 最新の技術動向を常に把握し、適切な特許出願を行う
- 特許出願前に、特許審査の専門家と相談する
- 特許紛争のリスクを最小限に抑えるための対策を講じる。
持続的な技術進化への期待
AI技術は、今後も進化を続け、私たちの生活や社会に大きな影響を与えていくと予想されます。
AI技術の進化は、医療、教育、環境、エネルギーなど、さまざまな分野で革新をもたらし、持続可能な社会の実現に貢献すると期待されています。
AI特許出願は、AI技術の進化を促進する重要な役割を果たしています。
企業は、特許取得によって、自社の技術を保護し、安心して技術開発を進めることができます。
また、特許取得は、AI技術の開発に投資する意欲を高める効果もあります。
AI特許出願は、AI技術の進化と社会への貢献を促進するために、今後も重要な役割を果たしていくと期待されます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました